第62回岸田國士戯曲賞受賞作品
神里雄大/岡崎藝術座
バルパライソの長い坂をくだる話
東京公演
2019年8月21日(水)〜25日(日)
ゲーテ・インスティトゥート東京 東京ドイツ文化センター
夫/父親の遺灰を海に撒きにやってきた人の話、
太平洋を越えた遥か昔の人類の話、
南米パラグアイで観測された皆既日食の話、
沖縄の地で今も眠る戦没者の骨を発掘する男や
小笠原でバーを経営する男の話───
オセアニアや小笠原や琉球の諸島、ラテンアメリカの
各国を自身で歩き集めたエピソードが織りなす
“メッセンジャーとしての演劇”。
自身の劇言語を確立し、文学界からも注目を集める神里が「移動」で歴史を切り拓く。
アルゼンチンに11ヶ月間滞在した神里が南米各地を訪ねて紡いだ物語。そこで出会ったアルゼンチンの俳優・ダンサーと、日系移民の家系生まれでブラジル育ち、欧州でも注目を集めるダンサーのエドゥアルド・フクシマが、その物語を体現。地球の反対側からやってきた彼らが自分たちの言葉で語る演劇。
2段ベッドや教会や屋台も置かれ雑多な異空間の客席は、建築ユニットdot architectsによるもので、そこに看板屋「看太郎」の廣田碧の書き割りによる幻想的な設えで舞台は彩られる。この珍妙なマッチングのもとで観客は自由に自分の居場所を見つけることになる。
神里雄大 創作ノート
演劇の持つ機能のうち、「伝聞」にぼくは重大な関心を持っている。誰かの言葉を、別の誰かがしゃべり、それをまた別の誰かが聞く。誰かのことに想像を巡らせることが、自らの言動に影響する、という一連の循環が演劇の根本なのではないか。
この作品で登場人物たちはたがいに知らせ合っている。その知らせが積み重なり、作品全体がひとつの大きな伝聞として、観客にもたらされる。これは移動の話であり、土地の移動のみならず、生から死へ、そして死から生への移動のことでもある。移動の積み重ねが受け継がれ、歴史を作る。そういう「伝聞」の作品である。
第62回岸田國士戯曲賞 選評
南米に生まれた彼にしか書けない、その特殊な身の丈が作り出した、他にはない世界である。
ー野田秀樹対象の関心領域が国境に限定されないこと。物理的に難しいことでは必ずしもないはずなのに、その実践は少ない。神里氏は実践者のひとりだ。
日本語を、日本語で行なわれる演劇を、拓いたものにできる人の一人である。日本語を、日本を、換気できる言葉を書く人だ。
ー岡田利規
日程・チケット
NEW! アフタートークゲスト発表!
8月23日(金)14:00公演のアフタートークに、沖縄を拠点に活動するラテンロックバンド「DIAMANTES(ディアマンテス)」のヴォーカルのアルベルト城間氏が登壇!
日系ペルー人を代表するアーティストであるアルベルト氏と、同じくペルー・沖縄にルーツを持つ神里が、本作のテーマでもある「国や言語を越えていく人々」について、言葉を交わします。
ー プロフィール ーアルベルト城間 DIAMANTES(ディアマンテス)ヴォーカル
ペルー生まれの日系三世。11歳からギターを学び、14歳で日系人歌謡コンクール新人賞を受賞。
中南米歌謡コンテスト優勝をきっかけに1987年来日。1991年にラテン・ロック・バンド「DIAMANTES(ディアマンテス)」を結成。作詞・作曲・ヴォーカルを担当し 1993年、デビューアルバム「オキナワ・ラティーナ」でメジャーデビュー。「ガンバッテヤンド」、「勝利の歌」、「片手に三線を」など数々のヒット曲を生み出し、全国各地でライブ・コンサートを展開。
楽曲提供や編曲・演奏などで他方面のアーティストとコラボレーションし、今まで以上に活動の場も広げている。
《楽曲提供やコラボレーションアーティスト》
宮沢和史(THE BOOM) 、真琴つばさ、中森明菜、加藤紀子、大城クラウディア、しおり、MONGOL800、普天間かおり・・・他地下鉄銀座線・半蔵門線・大江戸線 青山一丁目駅 4(北)出口より徒歩7分。
レビュー/掲載情報
東京公演のリハーサルのためアルゼンチンに2週間滞在している神里による滞在記。
出演者
from Argentina and Brazil!
Martin Tchira
マルティン・チラ
1981年アルゼンチン・ブエノス・アイレス生まれ。
子どもの頃から演技を始め、演劇、ダンス、映画、テレビなどパフォーマーとして幅広く活動するほか、ビジュアル・アーティストとも作品作りをしている。
演技に加え、ドラマトゥルギー、脚本を学び、タデウシュ・カントル研究などリサーチも行う。レオン・ロシチナー、ジャック・ランシエールなど哲学者の講義にも参加し、アラン・バディウとパフォーマンス創作も行なっている。舞台俳優としてはフェデリコ・レオン演出作品ほか、さまざまな演出家の作品に出演。自身が監督した短編映画『Madison』は、映画祭Cine Inusual de Buenos Aires及び、チリのタラパカ国際映画祭に参加。
神里メモ:ブエノスアイレスの日本食品店の近くに住み、アジア系食材を好んで使う菜食主義者。
でも、豚の生姜焼きの巻き寿司をうまいうまいと言って食べていた。マリーナからの紹介で知り合う。
みんなチラと呼ぶが、たまにマルティンと呼んでみるとうれしそう。
Martin Piroyansky
マルティン・ピロヤンスキー
1986年アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。12歳よりテレビ及び舞台での俳優活動を開始。
俳優として、劇団「GRUPO SANGUÍNEO」の作品に参加。19歳より映画での活動を始め、俳優として映画に出演するほか、自身の監督作品も発表。短編映画『No meama』は高い評価を得た。長編映画に加えてインターネットで発表するウェブ映像シリーズの監督を手がけ、最新作は『El Galan de Venecia』。
神里メモ:テレビ・映画への出演が多く、アルゼンチンではけっこう有名な俳優らしい。ブリの煮付けがお気に入り。
稽古中に貧血を起こして、緑のたぬきを食べて回復した。友人のデザイナーからの紹介で知り合った。この現場ではピロと呼ばれている。
Marina Sarmiento
マリーナ・サルミエント
1979年アルゼンチン・コルドバ生まれ。パフォーマー、ダンサー、振付家、演出家、講師。
コルドバ国立大学で社会福祉の学位を取得後、ラ・プラタ国立大学でダンス及び振付分析を学び、ダンス、演劇、実験音楽、ビジュアルやパフォーマンスの研究を行う。彼女の研究は、言語横断について、特に、身体・記憶・時間を取り巻く、批評的、自律的、反射的な言語を探求する点で傑出している。現在は、自身の振付作品に加え、南米各地のアーティストたちともコラボレーションも積極的に行なう。これまでに、国内外から支援を受け、振付家、ダンサーとして、一流のアーティストたちとのプロジェクトに多数参加。また、身体表現・トレーニングとヨガのクラスも定期的に教えている。実験的なワークショップ「FUERA DEL TIEMPO」と「LO QUE ACECHA EL RECUERDO DE SI」を主宰。自身の創作活動について学術的な機会においても執筆・発表している。
神里メモ: ブエノスアイレスを拠点に活動する振付家でダンサーだったが、最近コルドバという街に引っ越したらしい。
うどんが大好きだけど、ラーメンは嫌い。初演時は銭湯に毎日通ってた。彼女の振付作品を見に行って知り合った。そのままマリーナと呼ばれている。
Eduardo Fukushima
エドゥアルド・フクシマ
1984年ブラジル・サンパウロ生まれ。振付家、ダンサー、講師。
サンパウロ・カトリック大学の「コミュニケーション・ボディーアーツ」コースで学び、ダンスの学位を取得し卒業。2004年から、自身のソロ作品で様々な賞を受賞し、なかでもロレックス・メンター & プロトジェ・アーツ・イニシアティヴ 2012/2013 受賞により、台湾のクラウド・ゲイト舞踊団芸術監督の林懐民に1年間師事。これまでにも、作品発表のため、南米やヨーロッパ各国、カナダ、台湾での国際フェスティバルやプロジェクトへの招聘多数。2009年より太極拳とダンスのクラスも教えている。
神里メモ:ブラジル、サンパウロを拠点に活動するダンサー。うどんとお好み焼きが大好き。ひょんなことからヨーロッパで知り合ってだいぶ仲がいい。一緒に香川にうどん食べに行った。関係ないが神里は最近うどんを打ち始めた。エドゥとかドゥとか呼ばれている。
クレジット
作・演出:神里雄大
美術:dot architects、廣田碧
出演:マルティン・チラ
マルティンピロヤンスキー
マリーナ・サルミエント
エドゥアルド・フクシマ
ドラマトゥルク:野村政之
翻訳:ゴンザロ・ロブレド
衣裳:大野知英
照明:筆谷亮也
音響:西川文章
舞台監督:大久保歩(KWAT)
英語字幕翻訳:オガワアヤ
日本語字幕作成:川崎陽子、野村政之、神里雄大製作:KYOTO EXPERIMENT
宣伝美術:吉田健人(bank to)
舞台写真撮影:井上嘉和
企画制作:株式会社precog
主催:岡崎藝術座、株式会社precog
提携:ゲーテ・インスティトゥート東京 東京ドイツ文化センター
後援:アルゼンチン共和国大使館
助成:芸術文化振興基金、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
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